今回は、情報発信ビジネスの軸となるDRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)について詳しく解説していきます。
よく情報発信ビジネス=DRMというニュアンスの言い方がされることがありますが、
これらは全く違う概念で、「DRMを軸に情報発信ビジネスをしている」という方が正しいです。
インターネットや情報発信と非常に相性がいいと言われていますが、具体的にどのようなマーケティング手法なのでしょうか。
DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)とは?
DRMは「ダイレクト・レスポンス・マーケティング」のそれぞれの頭文字をとったものであり、言葉の通り「見込み客から直接反応を得ながら(反応を促して)行うマーケティング」です。
通販会社がテレビCMなどで「まずはお電話で!」とレスポンスを促し、
実際に電話してくれた(レスポンスがあった)見込み客に対して、商品のご案内する例は分かりやすいですよね。
- 反応(レスポンス)を促す
- 直接かつ相互的なやり取りの中で(見込み客の)購入につなげる
この2つが他のマーケティングと大きく違うところです。
マスメディアや自社HPなどから一方的にメッセージを送るのではなく、
電話やDM、はがきなどの直接的かつ相互的なやり取りのなかで、というのがミソです。
DRMの歴史
日本でDRMが普及したのはインターネットが誕生してから…もっというとネットが発達して個人でも情報発信ができる時代になってからのように思えます。
しかし、DRMが初めて導入されたのは今からちょうど100年前の、1920年ごろです。
場所はアメリカで、小売店が商圏を拡大するのに最適な方法として通販業界を中心に導入されていきました。
意外に思われるかもしれませんが、「通信販売」自体は150年前の1860年ごろからあるマーケティング手法です。
呉服店を経営するプライス・ジョーンズという人物が、フランネルを売るために全国の家庭にカタログとはがきを送付し、注文を募って、鉄道を使って商品を発送したのが通販の始まりです。
アメリカでは1920年ごろからラジオが誕生したこともあり、通信販売を進化させるかたちでDRMの原型が誕生しました。
日本では、1990年ごろにマーケターの神田昌典氏がアメリカから持ち込むかたちで導入され始めました。
ただ、1990年代はまだパソコンもインターネットも家庭では普及していなかったので、電話とDM(ダイレクトメール)が販売元と見込み客の主なコミュニケーション方法でした。
時代とともに変化するDRM
2000年ごろからパソコンが家庭に普及し、インターネットを利用する人の数が増えてきました。
それに伴い、DRMの方法も変化していきます。
電話とDMに加え、メールマガジンもコミュニケーションツールの一つとして使われるようになりました。
2010年ごろまでは自宅のパソコンでしかインターネットを使えない時代だったので、DRMを実践していたのはおよそ企業に限定されていました。
しかし2010年以降はスマートフォンが普及し、個人でもブログやSNSなどで情報発信ができるようになったので、
メールマガジン(ステップメール)やLINE@(Lステップ)で自動的にメッセージを送るのが主流になりました。
特に個人マーケターはステップメールやLステップを活用する場合が圧倒的に多いです。
DRMの基本的な流れ(集客・教育・販売)
ここからはDRMの実践方法について解説していきます。
DRMは集客・教育・販売の流れで販促していきます。
他と違うのは、『教育』という概念が間にはさまっていることですね。
集めたお客さんにそのまま商品を差し出すのではなく、商品を買いたくなるようなアプローチ(教育)をしてから商品を差し出す、ということです。
集客
文字通り見込み客を集めることですが、ここでのゴールはリストを獲得することです。
ホームページ(ブログ)やSNSなどで情報発信してまずは認知してもらい、興味を持ってもらって、メルマガやLINE@などに登録してもらうこと。
『リスト』というのは、見込み客のメールアドレスやLINEアカウント、電話番号などの連絡先ことで、
これを獲得することによりいつでもメッセージを送ることが可能になります。
逆に、リストを獲得できなければいくらHPやSNSにアクセスがあったとしても、あまり意味がないと言って差し支えないと思います。
ビジネスには『人』や『お金』、『情報』などの様々な財産がありますが、そのなかでも『顧客リスト』こそが最も大切な財産だとされています。
なぜか?それはいつでもビジネスを復活させられるからです。
江戸時代において商人にとって一番大切だったのは『顧客台帳』であり、火事があったときには顧客台帳だけを持って逃げたと言い伝えられています。
お店が燃えても、商品が燃えても、お金が燃えても、顧客台帳さえあれば新しく商売を立ち上げてモノを売ることができました。
それは現代のビジネスにも全く同じことが言えて、仮に事業がつぶれてしまったとしても、リストさえあれば違う商品を売ることできるので、極端な話いつでも復活することが可能なのです。
リストを集めるための施策として、ブログやYouTube、SNSなどで情報発信をしていきますが、
カスタマージャーニーマップや消費者行動モデル(コンテンツマーケでいえば『DECAX』)にしたがって、発信媒体を使い分けたり、発信内容を変えていきましょう。
例えば
ブログ:ストック型→役立つような発信や自分の価値観などを発信し、信頼や興味関心を獲得する
Twitter:フロー型 → 数打てるので認知度獲得に使える。告知やリマインドとしても使える。 YouTube:ストック型 → 集客というよりファン獲得、教育手段として使える。 |
たくさんの媒体を使うに越したことはありませんが、媒体ごとに特性が全然ちがいますし、ただ闇雲に発信しても効率的ではありません。
また、誰でもお客さんにしたいわけではないので、ペルソナ・ターゲットをしっかり決め、ブランディング戦略を立てて、来てほしいお客さんに来てもらうような集客を意識しましょう。
教育
DRMにおける『教育』とは、リスト化した見込み客に対して商品の購入率を高めるようなアプローチを施すことです。
『リードナーチャリング』というマーケティング用語にも置き換えられますが、
- リード(見込み客)を
- ナーチャリング(育成)する
という意味になります。
ちなみに、集客は『リードジェネレーション』と呼ばれています。
『教育』という表現に違和感を感じる部分もありますので、個人的には【集客・育成・販売】と言ってもいいと思っています。
とはいえ、ここでは『教育』で統一させていただきますが、本当にたくさんの教育方法があります。
- メルマガ
- 漫画
- セミナー
- ワークショップ
- 無料お試しセット
- 資料(カタログ)の送付
などなど。
ハウスメーカーが住宅展示場を開いていたり、楽器屋が音楽教室を開いているのも、DRMにおける教育的な意味合いが強いです。
個人の情報発信ビジネスの場合だと
- ステップメール
- ステップ配信(Lステップ)
がほとんどだと思います。
リスト化した見込み客に対して「商品購入率を高める」ためには
- 共感を得る(ファンになってもらう)
- 信頼を得る
- 必要性やメリットを感じてもらう
- デメリット、ネガを排除する
こういったような働きかけをすることがとても重要で、文章力(ライティングスキル)が全てといっても過言ではありません。
共感を得る(ファンになってもらう)ためには、自社(自分)の価値観や信念、ビジョンなどを(ストーリーテリングなどを用いて)強く語りかける必要があります。
また、無料お試しでまずは効果を実感してもらったり、実績やクライアントの声などを掲載して信頼を得ること。
また、「この商品を使うことでどういったメリットがあるのか」「なぜあなたにこの商品が必要なのか」も理解してもらわなければいけません。
そして、デメリットやネガなどの「買わない理由」をつぶしていくことも大事です。
本質的なところは「見込み客の商品購入率を上げるようなアプローチをすること」なので、どういった教育方法を採用するにしろ、ここだけはしっかり押さえたいですね。
販売
『教育』がしっかりされていれば、ごり押しするような『販売』はしなくて済むはずです。(そもそもセールスにおいてごり押しは良くありませんが…)
すでに相手の方から「○○さんから買いたいです!」という前のめりな姿勢になっているはずであり、
寸前のところで検討している人に対してはちょっとプッシュするだけで成約につながるはずです。
逆に購入率が低いとなると、前段階の『教育』の部分が機能していない可能性が十分にあるので、見直しが必要かもしれません。
とはいえ、『販売』においても重要なポイントはあります。
訪問販売や、通販番組などで思わず買ってしまった、、、
という経験がある人は「なぜ買ってしまったか」を思い返していただきたいですが
- 緊急性
- 限定性
- 特別性
- 信頼性
この4つの要素が盛り込まれていたと思います。
緊急性→「本日限定!」「緊急告知!」「残り3つ!」など
限定性→会員様限定、期間や季節限定、割引キャンペーンなど 特別性→競合商品にはない魅力や独自の機能、追加特典など 信頼性→実績、クライアントの声、実演(実演動画)など |
個人の情報発信ビジネスでは、ステップメールの最後の方でセールスレターを送ると思いますが、この4つのポイントを意識して作ると成約率があがります。
なぜ?DRMで利益が上がる仕組み
DRMを取り入れていない企業がDRMを取り入れると、売上が3倍5倍、あるいは10倍以上に伸びるケースがあります。
売上だけじゃなく、効率の良いマーケティングができるようになるためマーケティングコストが抑えられて、結果的に利益が劇的に伸びるようになります。
購入率が上がる
DRMを取り入れることで決定的に変わることは、商品の購入率が上がることです。
- 温度感の高い見込み客のみにアプローチできるから
- 『教育』という概念を間に挟んでいるから
誰にでも商品を差し出すのではなく、まずは反応(レスポンス)を促します。
反応してくれた人は温度感が高いので、そうでない人よりも商品の購入率は高い状態にあります。
温度感の高い見込み客に絞ってアプローチ(教育)をすることにより、さらに購入率が高まった状態で販売までもっていくことができます。
『教育』はDRMにおいてはとても重要な部分です。
ただお店に商品を並べておくよりも、来てくれた人に購入率が上がるような施策をしてから販売した方が、当然買ってくれる可能性は高そうですよね?
特に高額の商品や、必要性を強く感じなければ手を出しづらい商品などにはかなり有効です。
例えば、
- 車
- 楽器
- 家具家電
- 不動産
- 通信教育
- 健康食品
- パーソナルジム
- 教室、習い事系
こういったものですね。
お菓子や洋服くらいなら、お店で衝動買いする可能性はありますが、
車とか家電とかパーソナルジムとかを衝動買いする人はなかなかいないと思います。
また、健康食品や通信教育などは、何となくメリットがあることは分かっていても、よほど重要性(必要性)を感じなければ購入しない人が多いでしょう。
こういった商品・サービスに、DRMが効果的なんです。
実際にDRMを導入したことによって、売上が何倍にも爆上がりしたなんてケースはたくさんあります。
DRMと相性の悪いビジネス
余談ですが、逆にDRMと相性の悪いビジネスは、今すぐにでも解決したトラブルなどを解決してあげるような商品・サービスです。例えば、
- 離婚トラブル
- 怪我や疾患
- 水道管のトラブル
こういったものなどですね。
マーケティングコストを抑えられる
売上が上がるだけじゃなく、コストも削減できるといったメリットがあります。
- 不特定多数の人にアプローチするのではなく、ピンポイントの見込み客にのみアプローチすること
- 全てのプロセスをある程度自動化できること
- 温度感の高い状態でクロージングできること
これにより営業マンの人数をかなり減らすことができるので、人件費が減ります。
売上が上がって、コストが下がるので結果的に利益が上がることになります。
有名企業のDRM導入事例
誰もが知るあの有名な企業が、実はDRMを導入していたりします。
東進ハイスクールは定期模試で受験生のリストを集め、電話とメルマガでアプローチし、さらに1日無料授業体験や特別招待講習などを行うことで、入塾までつなげています。
健康食品で知られるやずやは、『ココカラPARK』というオウンドメディアからお役立ち情報を発信し、セミナーやイベントへの参加へつなげています。そこでさらに健康に関する知識意識を高めてもらうことで、販促につなげている感じですね。
電機メーカーで知られるNECも、『wisdom』というオウンドメディアを運営していて、テクノロジーに関する情報を発信し、セミナーやワークショップへのつなげています。そこでさらにテクノロジーへの知見を高めてもらうのと同時に、NECへのロイヤリティを高めることで販促につなげています。
最も代表的なのはドモホルンリンクル
出典:再春館製薬所
東進ハイスクール、やずや、NECと有名企業の導入事例を紹介してきましたが、
最もわかりやすくDRMを取り入れて大成功してるドモホルンリンクルについて紹介していきます。
CMの冒頭で「申し訳ありませんが、初めてのお客様にドモホルンリンクルをお売りすることは出来ません」と言い切ってしまっています。
「え?」と思って聞いていると、まずは無料お試しセットと説明書きを送付すると言い、最後に電話番号がアナウンスされます。
このCMは1996年に放送されていたCMですが、まさに
- 不特定多数の人に売らない
- レスポンスがあった(電話してくれた)見込み客にのみアプローチする
- 無料お試しセットと説明書きで『教育』する
というDRMの型にはまった施策をおこなっています。
ドモホルンリンクルとしては一度きりの購入ではなく、長期間愛用してくれる顧客を獲得したいので、DRMは最適な手法となっています。
最後に
今回は、DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)とは?というテーマでお話してきました。
インターネットが発達するまであまり主流ではなかったように思えるマーケティング手法ですが、
ブログやSNS、メルマガなどと非常に相性が良いので注目されるようになってきました。
売上や利益が何倍にもなる最強のマーケティング手法ともいわれていますので、ぜひご自身のビジネスに取り入れてみましょう!