今回は、『ブランディング』についてお話していきます。
ただの「キャラづくり」「イメージ付け」と軽視されがちなブランディングですが、実はビジネスにおいて最も重要な概念だと言っても過言ではありません。
ブランディングとは何なのか。何のために作るのかなど。さっそく書いていこうと思います!
ブランディングとは?
「イメージ」「らしさ」を作ること
「イメージ付け」でも間違いではないですが、言い換えるならば「らしさを出す(作る)」や「オリジナリティを演出する」といったところでしょうか。
ジャニーズにはたくさんのグループがありますが、『TOKIO』『KAT-TUN』『King&Prince』でイメージが全く違うと思います。
特にTOKIOなんてもはやアイドルなのかどうかも分からなくなってしまうくらい、ワイルドな方向に振り切っていますよね。笑
女性アイドルでも『モーニング娘。』『乃木坂46』『BiSH』では全然イメージが違うと思いますし、グループ内でもメンバーたちの個性は違います。
彼ら、彼女らは皆ちゃんと『ブランディング』を意識していて、ほかのグループやメンバーと差別化することで、人気を得ようとしています。
「あなたじゃなきゃダメ」状態を作ること
ちょっと違う視点から『ブランディング』を定義してみると、お客さんの方から「あなたじゃなきゃダメ」と言ってもらえるような状態を作ることです。
ビジネスには『ブランディング』のほかにも、『マーケティング』や『広告』といった概念がありますが、
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こういった違いがあります。
なので極端な話、ブランディングだけでビジネスが回るようになれば、広告や営業が不要になるため、ビジネスにかかるコストを大幅に削減できます。
「ブランディングを制する者が、ビジネスを制する」と言う経営者もいますが、その理由がこれですね。
ペルソナが好む世界観を作ること
もう一つ、別の観点からブランディングを定義すると、ブランディングとはペルソナが好む世界観を作ることです。
どのビジネスにおいても、ターゲット(顧客にしたい層)やペルソナ(理想的な一人の顧客像)を決めていて、できるだけターゲットやペルソナに近い人に商品やサービスを買ってもらいたいと考えています。
そのため、ペルソナが好む世界観を作ったり発信することが、自然とブランディングになるのです。
何のためにブランディングをする?
ブランディングって、何のために(なぜ)する必要があるのでしょうか?
戦わないビジネスをするため
よく言われるのが「競合他社と差別化するため」というようなことですが、はっきり言います。これは違います。
そもそもの前提として、競合他社と戦うような(パイを奪い合うような)ビジネスをするのは絶対に避けるべきことであり、「差別化する」と言ってしまっている時点でもう競合他社と戦ってしまっています。
じゃあ、競合と戦わないビジネスとそのためのブランディングって何?
といいますと、例えばスターバックスコーヒー。
スタバは日本で圧倒的に人気なカフェとして知られていますが、なぜ圧倒的に人気なのか。
「いや、スタバはカフェなんだからドトールやタリーズ、サンマルクといった競合がたくさんいるじゃん」と思うかもしれませんが、違います。
なぜなら、スタバが売ってるものはコーヒーじゃないからです。
スタバが売っているものとは、会社でも家でもない「サードプレイス」という空間だったり、ペーパーカップやタンブラーを街中で持ち歩くスタイル(体験)を売っているのであり、提供しているコーヒーはそれを叶えるための一つの手段でしかありません。
ホームページの会社概要にも書いてあります。↓
1996年8月 東京 銀座に日本1号店をオープンしてから今日まで、スターバックスは我々のミッションを大切に、一杯のコーヒーを通じて目の前にいるお客様と誠実に向き合い、言葉と心を交わしてきました。ペーパーカップやタンブラーを手に街を歩くスタイルや、家でも職場でもない「サードプレイス」の提案など、時代ごとの空気をつぶさに感じ取りながら、新たな価値を生み出し、文化を育んできました。
実際、あなたはスタバへ「コーヒーを飲みに」いきますか?多分違う目的で行くと思います。
話を戻しますと、スタバはコーヒーではなく「サードプレイス」や街中でペーパーカップを持ち歩く「体験」を売っており、ほかにこれを売っている企業はありません。
だから理論上は、スターバックスコーヒーに競合他社はいないし、誰とも戦っていないことになります。
そして、それを実現するために行っていることすべてを“ブランディング”といいます。(お店の内装やデザイン、ペーパーカップなど)
高単価のビジネスを行うため
ビジネスの原則として、価格競争に巻き込まれたり、値下げをするビジネスは上手くいかないというものがあります。
逆に、不思議なことに、価格をどんどん上げて高単価で勝負しているビジネスの方が圧倒的に上手くいっているというデータがあります。
では、同じ商品でも高単価で勝負するためにはどうしたらいいか?価格を上げるためにはどうしたらいいか?
ここに“ブランディング”があるわけです。
例えば、
「ヘアカット」の市場価格はQBハウスがいる限り1000円なんですが、美容院に行くと3,000円5,000円、あるいは10,000円以上するところもありますよね。
コーヒーだって、マクドナルドで1杯100円で売られているので、コーヒー1杯の市場価格は100円なんですが、スターバックスでは330円もします。
牛丼も吉野家やすき家では1杯400円で売られているので、牛丼の市場価格は400円のはずです。
しかし高級料亭で1杯5,000円の牛丼があったりします。
市場価格よりも圧倒的に高い料金にも関わらずビジネスが上手くいっているのは、ブランディングがしっかりしているからであり、その料金を払ってでも「その牛丼を食べたい!」と思われているからです。
ただ単に「ヘアカット」「コーヒー」「牛丼」そのものを売りにしてしまうと、
お客さんからすれば当然少しでも安い方がいいので、価格競争に巻き込まれ、値下げせざるを得ず、ビジネスとしてどんどん苦しくなっていきます。
幸福度の高いビジネスを行うため
小規模の事業や個人のスモールビジネスでは、お客さんになってほしい人だけを顧客にしなければ、たとえ売れたとしてもビジネスとして苦しくなります。
資本力があり従業員数もたくさんいるような大企業であれば、とにかく数売るスタイルでもビジネスは上手くいきます。
しかし、小規模の事業主や個人のスモールビジネスをやっている人は、大企業と同じ戦い方をしては上手くいかないので、
- お客さんの数を絞る
- 一人当たりの単価を上げる
- 継続的な顧客になってもらうことを前提に売る
こういった大企業とは違う戦略でビジネスをしていかなければいけません。
そこで、「誰でもウェルカム!」なノンターゲティングの集客をしてしまうとどうなるか。
依存体質な人やクレーマー気質な人など、質の低いお客さんを抱えてしまう可能性があります。
そういった人とは良好な関係を築くのが難しいし、相手もこちらが提供する価値を満足に受け取ってもらえなかったりして、最悪トラブルに発展する可能性もあるので、健康的なビジネスを行うことが難しくなります。
また、継続的な顧客になる可能性も低いので、永遠と新規集客をし続けなければビジネスが回らない状態となってしまいます。
そうならないためにも、ターゲティングとペルソナ設定をしっかりして、こちらが望むお客さんが集まるようなブランディングをしていく必要があります。
ブランディングで意識すべきこと(作り方)
どうやってブランディングをしていくのか?ブランディングで意識すべきことは?について書いていきます。
ターゲティング・ペルソナ設定
ブランディングをするにあたり、まずやっておかなければならないことは、ターゲティングとペルソナを決めることです。
つまり、「誰をお客さんにしたいか」を明確にすることです。
ブランディングとはペルソナが好む世界観を作ることなので、特にペルソナが決まっていなければ進みません。
創業10年で売上42億円・52店舗展開をしたSoup Stock Tokyoは、「秋野つゆ」という架空の女性をペルソナにし、この秋野つゆが来店したくなるようなブランディングをしました。
秋野つゆは「都内在住」「独身か共働き」「経済的に余裕がある」「都心で働くバリキャリ」「社交性がありながらも自分の時間を大切にする」「プールでは平泳ぎよりもクロールで泳ぐ」などなど、細かいところまで性格や行動パターンが設定されています。
秋野つゆをペルソナにブランディングをしていったところ、女性に大人気なお店になりました。
集客(どんなコミュニティにしたいか)
ペルソナ設定・ターゲティングの話にもつながりますが、「どんなお客さんを集めたいか」を考えることはブランディングを作る上でとても重要なことです。
なぜなら、お客さんがブランドを作るといっても過言ではないからです。
先ほどのSoup Stock Tokyoを例に出すと、来店するお客さんの8割が女性です。さらに言えば1人で来店する女性がとても多いお店です。
もしあなたがこのお店の前を通りかかったとして、どういう気持ちになるでしょうか?
あなたが女性であれば「行ってみたい!」「私も1人で入れそうかも」と思うかもしれません。
しかしあなたが男性であれば、「ちょっと入りづらそうだな…」と敬遠してしまうでしょう。
また他にも、
ある女性が居酒屋の前を通りかかったときに、「古いし狭いし、なんか私が好きなタイプのお店じゃないな…」とスルーしかけたが、わずかに見える店内から若い女性客たちが大半を占めていたのを見て、入店を決めた。
というような実例もあります。
「既存顧客が新規顧客を呼ぶ」なんて言い方もしますが、顧客の持つブランド構成力は相当なものなので、ぜひ「どんなお客さんを集めたいか(集客)」「どんなコミュニティにしたいか(コミュニティデザイン)」を意識してみてください。
発信の統一感
ブランディングをしていく際に必ず心がけるべきことが、「発信に統一感を持たせること」です。
こちら側が発信するブランド(世界観)を正確に受け取ってほしいし、より魅力的に感じてほしいわけですが、
そのためには人がコミュニケーションにおいて重要視している情報の割合について理解する必要があります。
これを「メラビアンの法則」と言いますが、
情報には主に「視覚情報」「聴覚情報」「言語情報」の3種類があり、人は
視覚情報:55%
聴覚情報:38% 言語情報:7% |
の割合で情報を重要視していると提唱されています。
これを見ると「人は見た目が一番大事」という風に思ってしまいがちですが、決してそうではありません。
これはあくまで、矛盾したメッセージが発せられた場合の受け止め方(何をどれくらい重視して判断するか)の話なので、
「見た目が大事で、話の内容は重要じゃない」というような誤解だけはしないようにしてください。
とはいえ、視覚と聴覚による情報を93%の割合で重要視していることから、非言語コミュニケーションってめちゃくちゃ大事であるということがわかります。
メッセージの内容ばかり気にしちゃいがちですが、話し方、表情、声のトーン、サイトのデザインなど非言語の部分ほど気を配るべきです。
そして、一番大事なのが発信に統一感を持たせることです。
人は矛盾した情報を受け取ったときに、視覚情報と聴覚情報を重視して判断しているというのが「メラビアンの法則」でしたが、
そもそも矛盾を感じた時点で信用を損ねているし、嫌悪感を持たれてしまうし、結果的に影響力が下がってしまいます。(ファンがつかない)
例えばですが、
2年ほど前からブレイクし「やればできる!」で有名なお笑い芸人・ティモンディ高岸さん。
彼は写真のような明るい笑顔で、熱く勢いのある感じで「やればできる!」というから説得力があります。衣装も常に熱いキャラクターを現したオレンジ色です。
これがもし、↓のような男性が同じ「やればできる」というセリフを言ったとして、どのような印象を受けますか?
暗い、うなだれてる、なんかボソボソと言っていそう、服装も暗い色
といったように「やればできる」のセリフからは、あまりにも視覚・聴覚の情報が乖離していますよね。
そうなると受け手は「やればできる」というメッセージを信じることは出来ませんし、発信者自体の信用も下がり、好感度も下がります。
結果的にメッセージもブランド(世界観)も受け手に届かなくなってしまいます。
ブランディングとは、視覚・聴覚・言語すべてで作っていくものなので、必ず統一していかなければなりません。
また、統一するための方向性は「ペルソナが好む世界観」です。
自分の言葉で発信する
特に個人でやっているスモールビジネスの場合、ありふれたモノゴトを自分自身の言葉で語ることこそが最強のブランディングです。
同じ市場でライバルと差別化するのではなく、自分自身で新たな市場をつくるという意識を持つことが大事で、イコール「自分だけの世界観をつくる」ことが“ブランディング”だと話しました。
では、どうしたら自分だけの世界観をつくることができるのでしょうか。
それが、すべてのことを自分自身の言葉で発信していくことなのです。
例えば、「自由」とは何か。「幸せ」とは何か。なぜ「稼ぐ」べきなのか。「モテる」とはどういうことか。「健康」とは何なのか。など。
抽象的で、人によってとらえ方が違う概念を、自分自身の言葉で定義して語ること。
正解のない哲学的な問いに対しても、これが正解だと言わんばかりに、自分の意見や価値観を言い切ってしまうこと。
これによりあなただけの世界観が構築されていって、そこに共感してくれた人が集まってくるのです。
とがった発信は炎上することもありますが深い共感を得られることがあり、逆に反対を恐れて誰にでも賛成を得ようとするほど、誰の心にも刺さらない発信となってしまいます。
僕もスモールビジネスをやっていて、当然同じような商品を売っている人は多く存在していますが、商品そのものを売りにしていては、比較されて優れている方あるいは安い方が選ばれてしまいます。
そうではなく、「この人から買いたい!」と思ってもらえるような世界観づくりを意識しています。
個人の情報発信ビジネスにおけるブランディング
最後に、個人の情報発信ビジネスにおけるブランディングの話をして締めようと思います。
モノ(商品)や情報に溢れかえった2022年現在では、ただ“情報”を発信するだけではビジネスとしてなかなか上手くいきません。
「稼ぎ方」「痩せ方」「モテ方」などの情報やハウツーは、検索すればいくらでも出てきます。
今の時代、情報そのものにもう価値は無くなってきていて、「どんな体験ができるか」「どんな未来(ライフスタイル)が実現できるか?」に価値が移っています。
そして人々がワクワクするような。もっと言うとペルソナが心からワクワクするような世界観をつくって「この世界観を私のライフスタイルの一部にしたい!」と思わせるような発信をしていくことが大事です。
そうやって成功している企業の代表例が、スターバックスであり、Appleであり、ハーレーダビットソンです。
ぜひあなたも、差別化じゃなく世界観づくりのブランディングを心がけてみてください。