ビジネスを立ち上げてはじめにやるべき『ペルソナ』の設定方法についてです。
ペルソナとは、『超理想的なたった1人の顧客像』を意味しますが、これをしっかりと設定するのは案外難しかったりします。
今回は、ペルソナを設定するべき理由や、初心者でも失敗しないペルソナの設定方法について解説していきます。
ペルソナ設定とは?ターゲティングとの違いを解説
まずは基本的なところから。
「ペルソナ(Persona)」はラテン語で、日本語訳すると「人格」や「人物像」を意味します。
マーケティングにおけるペルソナとは、『たった1人の理想的な顧客像』という意味になります。
出典:アライブ株式会社
「誰に顧客になってほしいか」を想像したときに思い浮かぶ、“1人の仮想顧客”を具体的かつ鮮明に表現します。
年齢や性別、名前、出身、職業。
その他にも趣味嗜好や行動パターン、生活リズムや実際の写真なんかもあった方がいいですね。
ペルソナの設定は、具体的であればあるほどいいし、鮮明であればあるほどGOODです。
ターゲティングとの違い
商品やサービスを届けたい顧客を定める、という点においては『ターゲティング』とも被りますが、
『ペルソナ設定』と『ターゲティング』では“決めるべきこと”が全然違います。
こちらの記事(ビジネスにおけるターゲティングとは?)でも解説していますが
ペルソナ設定では、上述したように「たった一人の理想的な顧客像」をより具体的にリアルに描きます。
しかしターゲティングでは、
- どんな「悩み」を抱えていて
- 「どうなりたい」と思っている人
かという、売りたい商品の価値を最大に享受する人は誰か?を明確にします。
よくターゲティングで年齢や性別、職業などを絞る人がいますが、それはペルソナ設定でやることです。
なぜペルソナを設定するべきなのか?
なぜペルソナ(たった1人の理想的な顧客像)を設定する必要があるのでしょうか?
その理由を以下の3つにまとめました。
- ペルソナに近い人が集まってくる
- 社内での認識の共有ができる
- たった一人の顧客を最大限に喜ばすことで、熱量が伝播する
ペルソナに近い属性の人が集まってくる
ペルソナを鮮明にし、ペルソナを意識したマーケティングをすると、
自然とペルソナに近い属性の人が顧客になりやすくなります。
ペルソナ戦略で大成功したブランドの例として、『Soup Stock Tokyo』がよく挙げられます。
『Soup Stock Tokyo』のペルソナ設定
出典:あんでぃ@ありがとうおじさん・ワクワク研究家 – note
Soup Stock Tokyoは『秋野つゆ』という架空の女性をペルソナにし、このペルソナを軸にマーケティング活動を行った結果、実際にペルソナに近い顧客が8割を占めています。
ペルソナ(秋野つゆさん)に属性が近い人ほど「行きたい!」と思うようになり、
逆に遠い属性の人ほど行きづらさを感じたり、そもそも行きたいと思わなくなります。
であれば、ペルソナを設定しない方が多くの人を顧客として取り込めるんじゃないの??と思うかもしれませんが、
そうすると逆に「誰にも魅力を感じてもらえない」「誰にも十分に満足してもらえない」というデメリットがあり、結果的にビジネスが上手くいかなくなります。
秋野つゆさんをペルソナとした『Soup Stock Tokyo』は、全国に60店舗以上を展開する大型チェーン店となりました。
また、個人のスモールビジネスにおいては「こちらが望んでいない顧客」が集まってしまうと、
逆にビジネスとして苦しくなるし、それを行う自分自身の幸福度が下がります。
自分が望んでいる理想のお客さんや、それに近い人だけが集まるようになると、非常に幸福度の高いビジネスを行えるので、そういった意味でもペルソナ設定は必須になります。
社内での認識共有ができる
ペルソナを設定することは、多数の部署がある企業のマーケティングにも効果を発揮します。
マーケティング・商品開発・営業・広報など様々なチームが連携してビジネスを行っていくのが会社ですが、
「誰に」「どんな顧客を想像して」ビジネスを行っているのかの認識が共有できていなければ、全体としてチグハグな感じになってしまいます。
結果的にマーケティングの効率が落ちたり、消費者へ価値が伝わりづらくなったり、顧客の満足度が下がったりするなどの弊害が生まれます。
ペルソナの共有がしっかりとできていれば、従業員全員が「この顧客に価値を届けよう!」という意識が統一されるので、価値の浸透度や顧客満足度が上がる結果となります。
たった一人の顧客を最大限喜ばすことで、熱量が伝播する
たくさんの人に満足していただけるに越したことはないのですが、マーケティングで意識すべきは全く逆で、「一人の顧客をたくさん満足させること」です。
だからペルソナ設定をしっかり固め、「このお客さんを最大限に満足させるには?」を考えていかなければいけません。
幻冬舎の箕輪厚介さんは、数々のベストセラーを生み出す名物編集者として有名ですが、
彼のポリシーは「自分自身が心の底から読みたいと思える本を作ること」だと、自身の著書で語っています。
僕はただ自分の読みたい本を作るだけだ。その最初の瞬間には、売れるか売れないかはどうでもいい。自分が好きな本を好きな著者と作る。それだけ。
あくまで自分が熱狂できるかが基準で、世界中の誰も興味を持たなくても、もし自分が最高の本だと思えば、それでいい。
引用:死ぬこと以外かすり傷
まずは、自分自身が心の底から「好きだ!」「読みたい!」と思えるものを作る。
それが自分自身だとしても、たった一人がとてつもない熱量で熱狂すると、それが周囲に伝播するかたちで広がっていきます。
1人が熱狂する → 伝播する → 小さなコミュニティが熱狂する → 伝播する → やがて熱狂の輪が広がっていく |
という流れですね。
仮に、最初から「たくさんの人が好むように作ろう」と思ってしまったら、誰も熱狂しないので熱量が伝播していきません。話題にもならず、思うように売れないという結果になってしまいます。
だから、まずは“たった一人”を最大限に満足させて、熱狂させるためにも、しっかりとペルソナ設定をすることが大事です。
一般的なペルソナの設定方法
出典:MarkeTRUNK
ここからは、ペルソナの設定方法についてです。
言ってしまえば、『超理想的な1人の顧客』の情報を書き出していくだけなので、方法という方法はあまりありません。
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こういった基本的な情報に加え、
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こういった行動パターン、思考パターン、価値観などを思いつく限り書き出し、
ペルソナのパーソナリティを作り上げていきます。
上記の項目をペルソナシートとして参考にしていただいて構いませんが、これでもまだ全然足りないくらいなので、アレンジしたり項目を増やしていきましょう。
具体的であればあるほど良いし、より鮮明にするために写真やイラストなどでビジュアライズするといいですね。
Soup Stock Tokyoの『秋野つゆ』みたいに名前なんかも付けちゃっていいと思います。
なんか愛着がわきますし、ペルソナをすぐに思い出しやすく(自分の中に定着させやすく)なります。
初心者でも失敗しない!ペルソナ設定のコツ
ペルソナ設定の難しいところ
僕も最初ペルソナ設定をしていて思いましたけど、なんかリアリティーさがないんですよね。
いくら項目を何10個も埋めても、実際にそんな人物いるのか?と疑ってしまったり、
根拠もなく項目を埋めていってもそれで完成したペルソナが本当に機能するのか…など。
もし大企業であれば、インタビューやアンケート調査をもとに、根拠があってリアリティーさもあるペルソナが作れるかもしれませんが、個人ビジネスの場合そのようなことをするのは難しいですよね。
しかも、インタビューとかアンケートは「統計」なので、実際の人間の息遣いを感じることは出来ないし、仮想とはいえ人間のパーソナリティーを形作ることは難しいです。
そして最も大事なのは、
根拠もなく、作った自分自身ですらリアリティーさを感じないような、“ただ項目を埋めただけ”のペルソナ設定は何の意味もない。
ということです。
ではどうすればいいのか?
ペルソナ設定のコツ
個人でも、初心者でも失敗しないペルソナ設定のコツ。
それは、実在する人物を1人決めてしまうことです。
もっというと、それは著名な人物であるといいです。
例えば、「20代前半くらいの、明るい性格で華やかな女の子がいいな」と、ざっくり思っていたとしましょう。
そうしたらもう、ペルソナを『広瀬すず』と決めてしまいます。
出典:タウンワークマガジン
それから広瀬すずさんの年齢や出身地、家族構成などの情報を洗いざらい書き出せばいいのです。
実際の広瀬すずさんのご職業は女優なので、そこらへんは『OL』に書き換えるなどの調整が必要です。
できるだけ著名な人物の方がいい理由は、情報がたくさんあるからです。
もしInstagramでたまたま見つけただけの、無名な一般人とかをペルソナにしてしまうと、
当然ながら情報があまりないので、書き出すことが困難になります。
ちなみに、僕の情報発信のペルソナは広瀬すずさんではありません。笑
(誰か分かったらすごいです。笑)
ペルソナを「過去の自分」に設定するパターン
過去の自分をペルソナに設定するパターンもアリだと思います。
例えば、ダイエット系のノウハウを販売するとして、過去の自分は体型がコンプレックスで苦しんでいたのなら、
過去の自分が心の底から喜ぶ商品を作り、過去の自分が買いたくなるようなマーケティングを仕掛けるのは合理的だと思います。
自分自身のことなので実在しているし、情報や生身の経験が豊富にあるので、ペルソナマーケティングがしやすいのは間違いありません。
ただ、留意すべきなのは「過去の自分のような顧客を集めたいのか」という点です。
過去の自分をペルソナに設定するということは、
年齢も性別も性格も職業も趣味嗜好も、過去の自分に近い人たちを集めるということになります。
「過去の自分のような人を集めたいんだ!」と思うのであれば、ペルソナを過去の自分に設定することが最も合理的かもしれません。
ペルソナを設定するだけで満足してはいけない!
ここからは、ペルソナを設定してからのお話です。
ペルソナを設定しただけで忘れてしまい、マーケティングに取り入れていないのであれば全く意味がありません。
ペルソナの発信を追いかけて、精度を上げていく
最初にペルソナを作った時点で、100%の精度であることはほぼあり得ません。
設定したらそれに近い人物の発信(SNSやブログなど)を追いかけて、思考や価値観などを肉付けしていき、どんどんブラッシュアップしていきましょう。
著名人であれば、公式のTwitterやInstagramなどのメディアをすべてフォローし、日常的に鑑賞することが大事です。
常にペルソナに関する情報に触れていないと、次第に頭からペルソナのことが消えていってしまい、ペルソナを無視したマーケティングになっていきかねません。
CJMの作成や、消費者行動モデルでフレームワークをする
CJM(カスタマージャーニーマップ)や消費者行動モデルとは何かについては、こちらの記事(カスタマージャーニーマップや消費者行動モデルとは?)を参照していただきたいですが、
マーケティングは常に“ペルソナ視点”で行われていくべきものです。
ペルソナ視点で購入までの行動経路を描き、ペルソナ視点で施策や改善を行っていきます。
でなければ、“事業者目線”オンリーのマーケティングになってしまい、ペルソナに近い顧客へ価値を届けることが難しくなります。
CJMの作成や、消費者行動モデルでフレームワークすることは必須ですが、設定したペルソナを中心に行っていきましょう。
ブランディングをより鮮明に、強固なものにしていく
「ブランディングとは何か」についてもこちらの記事(ブランディングとは?差別化じゃなく世界観をつくるブランド戦略)で解説していますが
一言でいうと、ブランディングとは「ペルソナが好む世界観をつくること」です。
そのためには、とにもかくにもペルソナを具体的に鮮明に作らなければいけません。
なのでペルソナを設定したら、ペルソナが好む世界観(つまりブランド)をより鮮明に、より強固なものにしていく努力をしましょう。
このときも大事なことは“ペルソナ視点”に立つことです。
常にペルソナを意識した情報発信をしていく
企業でも個人ビジネスでも、いまは情報発信を取り入れているケースが非常に多いです。
ブログにしろSNSやYouTubeにしろ、ただ発信しているだけなのと、
「どうしたらペルソナに近い人に届くのか」
「どうしたらペルソナに近い人に興味を持ってもらえるのか」
などを考えて、常にペルソナを意識して発信するのとでは、集客に大きな違いが生まれます。
できるだけペルソナに近い人を顧客にしたいのだから、ブランディングも情報発信もすべてペルソナを意識して行うべきです。
最後に
今回は、『超理想的なたった一人の顧客像』であるペルソナについてお話していきました。
設定方法は、実在する人物を1人決めるか、過去の自分にすると失敗がないことをお伝えしていきました。
設定したら、そこで満足して終わりではなく、CJMの作成や消費者行動モデルのフレームワーク、ブランディングや情報発信など、マーケティングのすべてにおいてペルソナを中心に行っていきましょう。
以上、ペルソナ設定についてでした!